残暑お見舞い申し上げます。酷暑に豪雨に感染症に等々大変ですが、皆様お元気でいらっしゃいますでしょうか。
さて文字で読むレキバク、少々間が空いてしまいました…!第17回は映画『大河への道』トーク。ほっこりクスクス笑えるほのぼの作品かと思いきや…!日本人全員に観て欲しい、日本の姿を始めて形にした人々の熱い物語です。※ネタバレあり
既に映画館での公開は終わっておりますが、ブルーレイ・DVDが10月5日に発売!ぜひチェックしていただきたい作品です。
映画『大河への道』が本当に素晴らしい!
立川志の輔さん原作、中井貴一さん企画主演の映画『大河への道』。
中井貴一さん演じる役所の職員さんが腕を組み、その周りを着物を着た皆が囲んでいるビジュアル。100%時代劇ではないので「絶対に観る」と決めていた作品ではありましたが、正直観る前にはそんなに期待値が高くなかった作品でした。
ずっと大河ドラマになってほしいと思っていた伊能忠敬日本地図に隠された秘密を探る“コメディタッチの作品”という印象を予告からも受けていたので、楽しく笑って帰ってくる作品かなぁって思ってたんですけども…すごい泣きました!めちゃくちゃ熱い作品でした!
脚本は市井の人を巧みに描く『おんな城主直虎』の森下佳子さん
原作…というか落語の方は存じ上げてない状態なんですけれども、脚本を書かれたのが樹咲がハマっておりました大河『おんな城主直虎』の森下佳子さん。
言い方はよくないのですが、“メジャーじゃない方”…つまり市井の方々をうまく織り込んでくるのが凄いと思う森下さんの脚本。
伊能忠敬を大河ドラマにしようという千葉県香取市の職員の方のお話。
現代の市役所の面々と伊能忠敬の地図を作るチームメンバーが同じキャストで現代とうまくリンクする形で、中間管理職の苦悩や、現代と過去では上下関係が逆になっていたりするのも面白いです。
上から見ることが不可能な時代の、地図作りの大変さ
とある脚本家に伊能忠敬の大河ドラマを書いてくださいと依頼し、その脚本家が伊能のことを調べ始めたところで1818年の方に切り替わり物語が進みます。
伊能さん、実は日本地図の感性の前に亡くなっておりまして3年間その死が隠されていました。
その完成までの3年間をどうチームが過ごし完成させていったか…というところに焦点が当てられております。
星を見ながら測量をするというのは『天地明察』でも出てきて、ひたすら歩いて歩数を計って角度を図って距離を出していくという本当に地道な作業をされている、そういう細かな人間の努力――ドローンなどで上から見ることもできない時代の測量技術。実際にこういう感じでやってたんだろうなと知れるところがまずポイント。
そして今にも通じる、上司から「今どうなってる進み具合は、いつまで予算使うんだ」みたいなやりとり。現代と江戸時代がリンクするところがコメディっぽくクスクスと笑ってしまうところが楽しみの一つ。
そして「絶対にこれは将来の日本のためになる」と、伊能さんが亡くなってからもそれでも意志を引き継いで絶対完成させるぞという人の熱さが見所の一つです。
劇場で観た方がいい、圧巻のラストシーン!
公開は終わってしまっていますが、ラストには本当に圧巻のシーンが。
遂に完成しお城でのお披露目の日。そこで今まで伊能さんの死を隠してたことがバレたら全員の首が飛ぶかもしれない腹を切らなきゃいけないかもしれない、というところで「伊能は次の間に控えております」と中井さんが言うのですが、観ている方は「えっ、伊能さんいないじゃん」ってなります。どうなるの!?と次の間を開けたところで…!(ここから大ネタバレのため自主規制、安心してお聴きください)
次の間を開けたところで…!(ここから大ネタバレのため自主規制、安心してお聴きください)
地域観光振興に持っていこうという観光振興の話でもある
地域の有名人をなんとか大河ドラマに仕立てて地域振興観光振興に持っていこうという、いわゆるプロジェクトのお話。
高知の『県庁おもてなし課』でも描かれました、観光客を誘致するために魅力を打ちたてて県外からのお客を呼び込もうという職員さんたちの熱いドラマ。
この勢いで本当に伊能忠敬が大河ドラマになったらすごいですよね。
(ロシアの侵攻など)こういう時世なので余計に思うところはありますが、やはり“地図ができる”という事は本当に凄いことなんだと。日本という国のかたちを、まだ誰も上から見ることなどできなかった時代に「自分の国がこういう形してるんだ」っていうことを初めて知った時の衝撃みたいなものも画面から感じられる不思議な経験をしました。
立川志の輔さん原作の新作落語の魅力
落語のスタイルで面白おかしく展開していく作品をいっぱい出しておられ、この『大河への道』も面白おかしく「ふふっ」てなるところが凄く多いです。落語を知っている方は、聴いてたらわからなかった部分が想像できた・ものすごく膨らんで見えたという感想もありました。
もう一つ感動したのが、観ている年齢層がとても幅広かったこと。学生からかなりご高齢の方まで、こんなにいろんな世代の人が見てる作品って結構久しぶりなのでした。
主語がとても大きくなりますが、「日本人みんな観て!」という気分になりました。
あんまり感動感動いうと薄れちゃうかもしれないんですけど、楽しめます。悲しくはなくほっこり、観終わった後「ああよかったな」って感じになる作品です。
『大河への道』是非ともご覧ください!
◇映画『大河への道』 https://movies.shochiku.co.jp/taiga/
◇立川志の輔公式サイト http://www.shinosuke.com/
収録日2022年6月17日 / 使用楽曲著作権:甘茶の音楽工房様、MusMus様、効果音ラボ様 ※収録はリモートで行っております